中欧諸国の定住システムは限界
2009年7月8日
UNHCRブダペスト(8日)発:
ルイ*はブダペストで自身が経営するファーストフード店で1日14時間働いている。しかしイラク難民である彼が家族を養い、家賃を支払うことは容易ではない。定住システムが存在しないか、もしくはほとんど機能していない状況のなか、彼のように苦労を強いられている人々は中欧諸国に多く見られる。
「怠け者なのではない」ハンガリーでの新たな暮らしに希望を抱き、妻のアンナ*と11歳、13歳の2人の子どもたちと共に避難してきた46歳の彼はつぶやいた。キリスト教徒である一家は2006年に宗教間の争いを避けてイラクから逃れ、6カ月後ハンガリーにて庇護申請が許可された。
難民として認められたことで、法的地位が与えられたが、それは同時に自立を意味する。ハンガリーは、他の中欧諸国同様、過去5年間にEUに加盟するまで、難民の経由地として役割を果たすのみであった。
これらの国々が定住システムの実施に遅れをとっている結果、セーフティーネットがないままに中欧諸国に定住する難民や庇護申請者が増加している。彼らは定住に際し、政府から言語や雇用、住宅、職業訓練などといったサポートが一切受けられずにいる。
定住に関する専門家でブダペストにおいてUNHCRとともに活動しているAreti Sianni氏は、ここ数年状況は改善されてきているが、「政府が既に資金不足である定住システムの更なる予算削減を示唆したことにより、金融危機のなか、深刻な影響を受けている。このシステムは限界に達している」と述べた。
現在、やむを得ず飲食店の経営をしているルイは、もともと農業工学の専門家だが、6カ月間のハンガリー語講習を受けないと同分野での仕事ができない。「学士号があっても何の役にも立たない」と嘆いた。
Sianni氏はルイやアナと同様の人々に共感し、「中欧諸国における定住システムは、自立支援や地域社会との融和を実現するには程遠い」と述べ、定住支援は難民の人々が「自立し、市民の一員として尊重されるまで」コミュニティーレベルで行われるべきであると加えた。
定住とは、様々な分野の利害関係者を巻き込む複合的な試みであるが、Sianni氏は、ブルガリアやチェコ共和国、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア、スロベニアでの1年間におよぶ調査の結果、これらの国々では難民の暮らしを尊重する要素が欠落しているという点を見出した。
不完全な定住プログラムにより、多くの人々が生計を立てるためのスキルを十分に活かせずにいる。なかには収入の90%を家賃に費やさなければならないケースもある。結果として多くの人々が貧しい暮らしを強いられ、社会から取り残され、ホームレスにならざるを得ないリスクを背負っているとSianni氏は述べた。
UNHCRはこのような問題に取り組む政府を支援する目的で、難民の定住に関するガイドラインを改善、提供している。しかし現在の経済危機により、中欧諸国が経費削減のために定住プログラムを削る恐れがある。
しかしSianni氏は近視眼的な大局を見据えていない見方だと指摘する。「よりよい定住プログラムを受けた難民は経済的に自立する。収入を得、税金を払う。しかし定住のために必要な支援が受けられない難民は、社会的なネットワークもないため、社会に貢献できずに重荷となってしまう」
ルイは家賃の支払いができなくなり、閉店を決意したが、将来が不安でならない。「車や財産ではなくただ人生が欲しいのだ」彼は言った。
*保護の観点から名前は仮名を使用しています
詳しくは、こちらへ(英語)