シリア難民の命をつなぐ医療支援:日本政府の資金協力

2017年3月24日 

レバノン/ベイルート

シリアの紛争が始まってから6年、レバノンでは100万人以上のシリア難民が避難生活を送っています。貯えが尽きてしまう人が多く、難民の約90%は借金を抱えています。その主な理由の一つは、命をつなぐために必要な医療サービスを受けるためです。UNHCRは難民に対して救急の入院支援など多岐にわたる医療支援を行っています。2016年、日本政府による276万米ドルの資金協力により、UNHCRは約4000人の難民の入院医療をサポートすることができ、何千もの難民の命が救われました。

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©UNHCR/Dalia Khamissy シリア難民アブダラ(12)は家族と共にレバノンで最も貧しい地域のひとつであるアッカールに避難しました。数ヵ月前、アブダラは兄弟や友達と遊んでいたときにけがをしてしまいました。



数ヶ月前、シリア難民のアブダラ(12)は、友達や兄弟と遊んでいるときに階段から転び落ちてしまい、両手首と頭を骨折、脾臓が破裂する大けがをしました。自分の子どもがこのようなけがをしたら親は誰でも不安になりますが、アブダラの両親にはもうひとつ心配事がありました。アブダラの父親は建設作業員として働いていますが、収入が不安定なため、息子の医療費を払うお金がありませんでした。レバノンではほとんどの医療施設が民営化されており、医療費を払うことは難民にとって大きな経済的負担になります。そんな中、日本政府を含むドナー機関の協力により、アブダラは必要としていたケアを受けることができました。彼は直ちに病院に運ばれ、出血が止まるまでの4日間集中治療室で過ごしました。

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©UNHCR/Dalia Khamissy まだ手首に治療の跡が残っていますが、彼は少しずつ文字を書く力を取り戻しています。



2016年12月に公表された調査によると、レバノンで暮すシリア難民にとって、医療費は食費と家賃に続き三番目に大きな出費です。これは、脆弱な立場にあり、生きていく上での基本的なニーズを満たすのに苦労している難民にとっては厳しい現実です。

アブダラの母は、「UNHCRが病院でかかった費用の90%をカバーしてくれました。息子のけがの治癒には時間がかかりました」と話します。学校に戻った後も、一ヵ月以上手首に包帯を巻いていたアブダラは、書くことが難しくなってしまいましたが、今は徐々に回復し、学校の行事にも参加しています。

アブダラが経験したようなけがは、レバノンで暮すシリア難民が入院治療を必要とする最も一般的な理由です。その他には、出産、呼吸疾患、感染症および寄生虫症、新生児の先天性疾患、中毒、胃腸疾患および心臓血管疾患などが挙げられます。

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©UNHCR/Dalia Khamissy アブダラが宿題をする中、弟は同じ部屋で遊んでいます。まだアブダラは弟と遊べませんが、書くことができるようになりました。



アブダラが頑張って宿題をしているとなりで、弟のタハ(7)は無邪気に宙返りをくり返していました。まだ痛みが残っているため、アブダラは思うように友達や兄弟と遊ぶことができません。それでも、アブダラは治療のおかげで手をほぼ普通に動かせるようになっていました。

医療へのアクセスが不十分な場合、難民が体調を崩したり、精神的苦痛を抱えるリスクがますます増えます。また、シェルターの品質が低いこと、適切なゴミの処理ができていないこと、衛生管理体制が整っていないことは難民の健康状態悪化の原因となります。

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©UNHCR/Dalia Khamissy ソウサンは昨年8月に感じた激痛を今でも忘れられません。レバノン北部に搬送されたソウサンは、到底払うことのできないほど高額な緊急手術を受ける必要がありました。



レバノン北部のトリポリで、シリア難民のソウサン(30)に出会いました。2016年8月、彼女はお腹と背中に耐え切れないほどの激痛を感じ、地元の病院の緊急センターで検査を受けました。検査の結果から胆嚢炎であり、ただちに手術を行わなければいけないことが分かりました。

しかし、仕事が見つからず生活支援に頼っているソウサンと家族にとって治療費を払うことは不可能に近いことでした。2016年12月に発表されたUNHCRとUNICEF、WFPの合同調査によると、レバノンに住む70%以上のシリア難民が、定められている貧困ライン以下の生活を送っています。ほとんどの難民が、UNHCRやパートナー団体とレバノン政府の支援に頼ることでやっと必要な医療を受けることができる状況にあります。

大勢のシリア難民がレバノンで暮らしていますが、UNHCRの資源は限られているため、すべての人のニーズを満たすことは簡単ではありません。それでも、日本政府やその他のドナーからの寛大な資金協力によって、UNHCRは難民の緊急搬送、救命処置、病院代を含む医療費の75%から90%を負担することができています。

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©UNHCR/Dalia Khamissy ソウサンはUNHCRの協力で無事に手術を終え、家族のもとに帰りました。



UNHCRが医療費の大半をカバーしたため、ソウサンは無事に手術を受けることができました。「もしUNHCRが費用の75%をカバーしてくれてなかったら、おそらく胆嚢破裂を起こしていたでしょう。手術を受けていなかったら、私はどうなっていたか分かりません」と彼女は息子のモハモド(5)の横で語りました。

アブダラとソウサンのように、UNHCRを通じて日本政府が行っている医療支援のおかげで命を救われた難民は73,000人以上に上ります。